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【2025/02/02 19:37 】 |
冷却設備増強
 平素より酔鯨を御愛飲いただき、誠にありがとうございます。おかげさまで10月から始まる平成26年度の仕込みは、仕込本数ベースで前年対比112%の増加となりました。増産分は仕込期間を延長しての対応となります。
しかしながらここは南国高知、仕込期間を延長すると醸造工程の温度管理が難しくなってしまいます。
 温度管理がままならなかったという理由で酒質を落とすわけにはいかないので、夏の間に仕込蔵の空調設備増強を中心に、期間延長に向けた設備改造を行いました。麹つくりを除く仕込工程全般において外気温の高い状態は様々な意味で酒質に悪影響を及ぼします。
 寒造りという言葉がありますように、冷房設備の無い時代には酒造りは寒い時期に行うのが一般的でした。これにはいくつかの理由があります。
 まず第一に雑菌汚染の問題があげられます。清酒を造ってくれる酵母は比較的低温に強く、この低温環境を保ってあげると有害な雑菌に汚染されるリスクが減ります。北極の氷の上と熱帯のジャングルでは生態系が全く違いますが、同じように微生物の世界でも温度などの条件により棲んでる微生物の種類が大きく異なってきます。低温にすることで、酵母が生存競争に勝ち残りやすくなるのです。
 次に醗酵温度の違いが酒質に影響するという問題があげられます。酵母は低温に強いといいましたが、あくまで他の微生物と比較してのことです。酵母といえども温度が高い(30℃くらいの暖かい)環境の方が元気が出ます。ただし酵母が元気を出せばいい酒になるかというとそういう訳でもありません。酵母は温度が低い(10℃くらい)方がおいしい酒を醸してくれます。わざと矮小化して枝葉を整える盆栽のようなものでしょうか。酵母のためではなく、酒を美味しく呑みたい人間のために低温環境を維持してるともいえます。
 最後に原料米の冷却の問題があげられます。水を吸った米は蒸すことにより麹の酵素分解を受けることが可能となります。この蒸した米を仕込んでいくわけですが、蒸し終わった直後のアツアツの状態で仕込んでしまうと麹の酵素が作用しなくなり米が溶けてくれません。人間も唾液無しでアツアツのご飯を食べても、食べたご飯を消化することはできません。これと同じです。同時にアツアツの状態だと、酵母も死んでしまうので、酒にはなりません。このような理由で蒸して熱々になった米を冷やさなければならないのですが、結構な温度(10℃以下)まで冷やさなければなりません。冷却設備の整っていなかった時代は冬場の冷たい外気で冷却するしかなかったのです。
 長々となってしまいましたが、来期にむけて低温環境を整備した理由を理解していただけたでしょうか。私どもは常々酔鯨を美味しく呑んでいただくためには、最適な醗酵環境を整えることから始めなければならないと考えております。今後もおいしい酒を醸すための設備増強には努力を惜しまず取り組んで参ります。

冷房設備を増やしました。       仕込蔵の入り口に扉を付けました。

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【2014/09/24 11:30 】 | 未選択
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